サウイフモノ二ワタシハナリタイ

 雨にも負けず、風邪にも負けず。空腹にも負けぬ体を持ち、欲は無く、決していからず、
いつも静かに笑っている。志し半ばで病に倒れようとも、我、何故に義務を真っ当するや。
 東で…西で、助けを請う者あらば、奉仕をし、南で…北でありとあらゆるモノに無償で奉仕し、還元する。
馬鹿と罵られ、蔑されても己の信念を信じ、褒められもせず、気にもされず。そういう者に私はなりたい。

 「ちょっとスケールが大きい例え話」

 むか〜し、むかし。ある所にそれは広い広い何とも広大な畑がありました。
農家の人が一心懸命に耕し、手入れがよく行き届いた畑。そこにはたわわに実った、何とも美味しそうな
野菜が顔を出していました。その畑をいつも羨ましそうに遠くから見つめる一人の若者がおりました。
「俺も…何か作ってみたいな」
 若者の中で何かを作りたいという想いが次第に強くなっていきます。すると農家の一人が、
「おみゃーさんも何か作って育ててみたいのかぇ? 一から何かを作る、育てるって言うのは見てる
 だきゃーのもんにはわからんとね。おみゃーさんさえよかぁ…畑さ貸してもよかとね」
 なんと、農家の人は畑を無料で貸してくれるというのです。その変わりに、今はまったく使われていない
手付かずの畑を一から耕す事。地主様に税金としてご所望のお野菜を献上することの二つの条件を
のめるのであれば…という条件付きで。
「無料で畑さ貸してくれるってんならありがてぇ話だ。願ったりだね」
 若者はひょんな事から畑を借り入れる事になりました。
「これで俺もこの広い広い畑の主さね」
 これから先の苦難の事なんておかまいなしです。男は自分の畑が持てた事を喜んでいました。

 その日から畑の手入れが始まりました。広大な畑の中に男が一人。今まで手付かずだった畑は痩せており、
今のままでは野菜はまったくといっていい程育たないでしょう。この広大な土地を一人で耕さなければならないのです。
 出来る範囲から少しづづ。男はたった一人で、土を掘り返し始めました。男はひたすらに頑張ります。
頑張って頑張って土地を耕します。でも、一向に畑の手入れが進む気配がありません。そう…一人での手入れ
出来る範囲などたかがしれています。一人でやっていても畑の手入れが進む訳がありません。男は考えます。
「他に手伝ってくれる人を探そう」
 男は探し回りました。縁のある者、知り合い、街の者。ありとあらゆる者に声をかけ、
共に手伝ってくれる人を探します。でも―誰も男を手伝う者はいませんでした。
「何で私が無償で奉仕せなならんのだ。ばかばかしい。」
 そう…誰も無償で奉仕するなんて考えていないのです。働いたならばそれに比例する
お給金が必要と逆にたしなめられてしまいました。

 結局、誰からの協力を得る事もなく、一人で耕さざるを得なくなった男は考えます。
この土地を放棄するのかしないのかを。このままでは地主様への税金を納める事無く、畑は返還されてしまいます。
「やめるのは自分の勝手だ…だが…」
 ……男は悩み、迷いました。
「だが、残された畑は一体どうなる?」
 せっかく耕した畑も、男が耕すのを止めてしまえばただの荒れ地に逆戻りです。
「…やめるのは自由だ。だが残された畑はどうなる?」
 どんなに広い畑も、手入れがされていなければただの痩せた畑です。
「なぁに…悩む事はない。やれるまでやるだけのこと」
 男は出来る範囲で続ける事を選択しました。無償で奉仕し続ける事が馬鹿だと知りながらも。
『作ったモノにしか解らない喜びがある』
 まだ見ぬ野菜。まだ苗(種)すらも植えられない畑。
「日々成長していく姿を目の前で見る事が出来る。そして自分の手で成長させていく。これ以上の幸せがあるものかね」
 男は今日も耕します。誰も知らない畑を。誰も気にしない畑を。
 いつか、大きくなって…皆をあっと言わせる日が来る日を信じて……。

「一日、一日、日々死ぬ思いで生きよ。」


――後書き。
70万PV達成記念、2004年最後のコラム。センチメンタルに染めてみました。ほら、疾葵さんって
馬鹿と熱血しか書けないんじゃないかって思われるのは心外ですから。シリアスっぽぃのも書けるんですよ〜。
……つーか5年間も物書きやっててコレなのか。これっぽっちなのくぁぁぁっ!
はっはっはーどうしたどうしたーそれで終わりか?終わりなのくぁ?

「うぬの力をもっと我に見せてみよ。さぁどうしたぁぁぁ―――」

プロレス風ノリは嫌い。露骨な下ネタ表現も嫌い。ついでにバットエンドも嫌い。
そんな制約の中でいかに表現するかを追求している今日この頃。
……頭はいかれてても理性は大丈夫です。今日も前科無しさっはっはっはー
強調しないと信じて貰えない所に哀愁を感じますね。(涙) 2004.12.31

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